フリーランスなのに、他人にコントロール?

1.名ばかりフリーランスの実態

労働政策研究・研修寄稿の2019年の実態調査によれば「名ばかりフリーランス」が国内のフリーランスのうち4割を占めるということが先日の日本経済新聞に掲載されていました。

「名ばかりフリーランス」とは特定の1社からの受注が仕事の大半を占める、1社への専属・優先の取り決め・または慣行をもつような方々を指すようです。

記事によれば、専属している会社との契約に違反すると、契約解除されたり、更新されなかったり、最低賃金や労働時間も保証されず、かつ報酬も期日までに支払われないというようになるようです。

この状況を見て、新聞・マスコミなどの論調は保護や規制を作るといった方向のようです。

ただ、こういった感じで仕事をしているフリーランスの方々は、出社義務がないだけの不安定な契約社員と実態的には大して変わらない気がします。確かに発注側の横暴はある程度取り締まる必要は感じますが、「守られたフリーランス」というのも少し違和感を覚えます。

2.自分はなぜ独立したのか

自分を振り返ってみて、なぜ独立したのかをまず考えてみました。

大きな要素としては、次の3つだと考えています。

  • その仕事をするかしないか自分の意思でできる
  • 自分の意思で働く時間や場所を決められる
  • 自分の成果物で正当に評価してもらい報酬がもらえる

簡単にこの3つを一つの言葉で表すと「自分の運命を自分である程度コントロールできること」だと思います。

こう思うに至った名言があります。それはGEの名経営者だったジャック・ウェルチの次の言葉です。

Control your own destiny or someone else will.
(自らの運命をコントロールせよ。さもなければ、他人にコントロールされることになるだろう)

自分も会社員だったので、多少低めでも定期的な仕事と収入があるのは魅力的でしたが、会社勤めをした方はわかると思いますが、やはり会社が大きくなればなるほど、自分のコントロールの範囲は狭まる気はします。

独立しても当然ある程度の制約はあって、いくら時間が自由だからといって、お客様の求めている期限までには原則仕上げる必要はありますし、どこで働いていいといっても、お客様の秘密資料を扱う仕事をカフェなどではやれません。

ただ、自分の場合、支払がはっきりしない、安く評価する、社会的に望ましくないお仕事と自分が思う(詐欺まがい、価値のないものを高額で売りつける)などは絶対受注しません。

偉そうなことを言っていますが、実は自分も独立した最初は1社の仕事が大半である時代が3年近く続きました。独立を決意した直後に東日本大震災があり、仕事が数か月間全く取れない時期が続いた中、そこで取れた仕事なので非常にありがたかったですし、その会社も評価してくれ、報酬もフェアで悪くなかったです。専属までは要求されず、「ある程度優先してくれればいいよ」ということでした。

しかし、会社の上層部が変わって雰囲気が悪くなり無理な期限などを平気でいうようになってきました。何となくぬるま湯の世界で心地よかったのでしたが、目が覚めました。所詮他人にコントロールされる世界にいたことに気づいたわけです。やはり1社専属からの谷はいつか渡らなくてはならないものです。

そこで契約を解除してもらい、大げさですが「ルビコン川をわたった」わけです。

3.専門性に磨きをかける

独立して最初にやったことは「専門性に磨きをかける」でした。

しかし、それは必要で怠ってはいけないこととは思いますが、単なる必要条件でしかありません。1社と言えども仕事が来る方というのは、そもそも何らかの専門性があるから仕事がくるわけであり、専門性には自信をもっていいのではないでしょうか?

確かに上には上がいるかもしれませんが、気にしないということも大切だと思います。トップを目指すのを否定しませんが、漠然と目指すのはコスパ的にも一般的にはお勧めできません。

ただ、同じトップを目指すといっても、ニッチな狭い分野でトップ目指すというのはありかもしれません。

  • 単なる「ウェブデザイナー」ではなく、「ボーリング場専門ウェブデザイナー」
  • たくさんいる「税理士」ではなく、「トンガ王国税務専門の税理士」(そういった需要があるかは別にして)

業種・業態の中でトップになるのは難しいですが、上記のような考え方で、ニッチな狭い分野であれば不可能なレベルではないと思われます。

加えて、集客に力を入れて、交流会や勉強会に出席、ウェブマーケティング活動にいそしむというのもありです。

こうやって、ある程度の専門性と集客をやることで、とりあえず食べていくぐらいはなんとかなるパターンは多いです。

ただ、専門性だけでは事業としての安定性と継続性に乏しいのではないでしょうか?

4.「仕組み化」を目指す

安定的・継続的に受注が来る、来た仕事を断らずにできるリソースがある、これはフリ―ランスの方にとっては有難いことですよね。

そのためには、自分がサービスとして提供できる専門性に加え、人や他社とのつながりが必要となってきます。そしてこれらを「仕組み化」したものがビジネスモデルです。

成功している企業をみると、その裏には必ず優れたビジネスモデルがあります。よく画期的な製品を生み出した企業が成功していると思われがちですが、そうではありません。

  • 検索エンジンはGoogleが発見したものではありません
  • 自動車という分野で、トヨタは世界的にかなり後発です

逆にビジネスモデルという地盤がないと、いくら集客しても目の粗いざるのような状態になってしまいます。

フリーランスといえども、事業主である以上、自分にあったビジネスモデルを中長期的にはみつけていく必要はありますよね。

5.「ビジネスモデル」という敷居を下げる

そうはいっても「ビジネスモデル」を考えること自体、なんとなく難しそうで敷居が高いと感じられる方は多いと思います。

そういう方におすすめの書籍として、『ビジネスモデル2.0図鑑』という書籍があります。

この本は、100社の「すごいビジネスモデル」を見開きでシンプルにまとめ、しかも統一されたフォーマットでビジネスモデルが図解されています。

ただ、個人的な印象ですが、図解自体はとてもシンプルに見えるものの、パッとと見るだけではその企業のビジネスモデルをしっかり把握できないという感じがしています。

そこで、KITENではこの書籍で取り扱われている「すごいビジネスモデル」を、丁寧に解説し、ビジネスセンスを磨くための研究会をシリーズ開催しています。

この勉強会は2020年1月から始まっていますが、どなたにでもわかることを心がけ、とてもカジュアルな雰囲気で行っています。これまでの参加者はクリエイターの方ばかりで、研究会終了後のランチ会でも話題はつきませんでした。(ご興味ある方は当サイトメールマガジン「KITEN通信」にご登録いただければ、案内を差し上げます。)

1社専属の谷をわたり、ご自身の事業を立ち上げたい方、当研究会にぜひご参加いただけるとうれしいです。